一問一答 行政法の原則や原理
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Q1-Q5
問1

私人がその権利を濫用する場面には権利濫用禁止の原則が適用されるが、国又は地方公共団体の行為が問題となったケースについて、権利の濫用ないし行政権の濫用として違法と認定されることはない
参照

1の正解はここ
誤り
余目町個室付浴場事件 などを参照。昭和53.5.26

問2

信義誠実の原則及び信頼保護の原則は行政上の法律関係にも適用される場合があるが、課税関係においては、租税法律主義の厳格な適用による納税者間の平等を犠牲にしてもなお納税者の信頼を保護しなければならない特別の事情がない場合には信頼保護の要請は劣後する
参照

2の正解はここ
正しい
青色申告承認申請懈怠事件 参照。昭和62.10.30

問3

公営住宅法及びこれに基づく条例の規定によれば、公営住宅の事業主体は、公営住宅の入居者を決定するに際しては入居者を選択する自由は認められていないと解されるので、入居後における入居者と事業主体との間の公営住宅の使用関係について、賃貸借契約関係における信頼関係の法理の適用はない
参照

3の正解はここ
誤り
 昭和59年12月13日 建物明渡等 参照
公営住宅の入居者を決定するについては入居者を選択する自由を有しないものと解されるが、公営住宅の使用関係が設定されたのちにおいては、両者間には信頼関係を基礎とする法律関係が存するものというべきである。

問4

行政には自らの活動を各種の手段を通じて国民に説明する責務があるとする説明責任の原則は、アカウンタビリティの原則と呼ばれることに示されているように、アメリカに固有な制度に由来するものであり、わが国の法令の目的規定等において明文で掲げられた例はない
参照

4の正解はここ
誤り
行政機関情報公開法1条 などのように説明責任の原則、アカウンタビリティの原則が明示されています

問5

地方自治法第2条第14項は、行政活動は経済性、効率性等の見地から適切なものでなければならないとの原則を明文化したものである。しかしこの原則は行政内部にのみ妥当するものであるから、専門の機関である監査委員等のみがその統制を行うことができ、住民訴訟等において裁判所が同原則の違反を統制する事は許されない。

5の正解はここ
誤り
効率性の原則は行政法の一般原則とされるもので、監査委員だけでなく裁判所も、住民訴訟などにおいて裁量統制を行うことができます

Q6-Q11
問6

地方公共団体の企業誘致施策が変更されたことによる損害の賠償を誘致の相手方の企業が請求した事件について、最高裁判所は、特定の者に対する行政の具体的勧誘を伴った場合であって、求められた活動が長期にわたる施策の継続を前提として初めてこれに投入する資金・労力に相応する効果を生じ得るものであるときには、代償的措置を講ずることなく施策を変更することは、それがやむを得ない客観的事情によるのでない限り、信頼関係を不当に破壊するものとして違法性を帯びると判断した。
参照

6の正解はここ
正しい
昭56.1.27 参照

問7

ある産業廃棄物処理施設の建設計画があることを知った地方公共団体が、規制対象事業場に認定された処理施設について一定区域内におけるその操業を禁止する水源保護条例を制定した上で、当該処理施設を規定対象事業場に認定した事例において、最高裁判所は、認定前における事業者との協議の規定が条例に盛り込まれていたことなどに照らすならば、当該地方公共団体には、事業者と十分に協議し水源保護の目的にかなうよう事業内容を改めるなどの指導をして、その地位を不当に害することのないよう配慮する義務がある、と判断した。
参照

7の正解はここ
正しい
平16.12.24 参照

問8

行政は、国民の代表によって作られた法律に従って行われなければならないのが原則だが、行政上の法律関係においても慣習法の適用が排除されるわけではない

8の正解はここ
正しい
行政権限の根拠に関する法ではなく、行政権限を行使する対象の私人の権利自由の根拠に関しては、既存の法律に反しない限り慣習法の成立の余地を認める見解がある。

問9

最高裁判所の判例によれば、民事上の法律関係を規制する原理として生まれた信義誠実の原則は、租税法律主義が妥当する租税法律関係については適用されないと解されている

9の正解はここ
誤り
昭62.10.30 参照
租税法律関係においても、法律による行政の原理を修正するかたちで、信義則が行政活動の統制原則として機能することがあると示している

問10

国家における行政組織のうち、少なくともその基本構造については、国会が定めるべきものと解されている

10の正解はここ
正しい
法律は、憲法41条に基づいて国会が制定する規範で、国民の自由を制約したり、義務を課す内容については必ず法律を伴った議会の承認が必要である。組織に関する規範は内容的には法規ではないが、民主主義的見地からは「法律で定めることが好ましい。そこで重要な行政組織については国会が法律で定めるべきである」とされています。

問11

最高裁判所の判例によれば、職員が通達を違法と考えた場合、その通達に沿った上司の命令に服従すべき義務はなく、服従拒否を理由とする懲戒処分は違法になると解されている

11の正解はここ
誤り
昭52.12.20 参照
通達や職務命令は行政組織の内部法として下級機関や職員を拘束し、これに違反した職員には上司の命令に反したとして懲戒責任が課される。通達が違法であったとしてもそれが重大明白でない限り、下級機関職員はこれに拘束され、服従すべき義務を負うと解する。

問12

国家公務員の災害補償について国家公務員法や国家公務員災害補償法等に詳細な定めがおかれていることからすると、国が国家公務員に対して安全配慮義務違反に基づく損害賠償責任を負うとはいえない

12の正解はここ
誤り
昭50.2.25 参照
国は公務員に対し、公務員の生命及び健康等を危険から保護するよう配慮すべき義務を負っていると解する。
安全配慮義務は
ある法律関係に基づいて特別な社会的関係の当事者間において、一方又は双方が相手方に対し信義則上負う義務として一般的に認められている。

問13

公営住宅の使用関係については、事業主体と入居者との間の法律関係が、基本的には私人間の家屋賃貸借関係と異なるところはないとしても、民法及び借地借家法は適用されない

13の正解はここ
誤り
昭59.12.13 参照
公営住宅の使用について、公営住宅法及びこれに基づく条例が特別法として民法及び借家法に優先して適用されますが、特別の定めがない限りは、原則として一般法の民法及び借家法の適用がある

問14

国税滞納処分における国の地位は、民事上の強制執行における差押債権者の地位に類するものであるから、国税滞納処分による差押えの関係においても民法第177条の適用がある。

14の正解はここ
正しい
昭31.4.24 参照
滞納者の財産を差し押さえた国の地位は民事訴訟法上の強制執行における債権者の地位に類するものであり、国が一般私法上の債権者より不利益の取扱いを受ける理由はないので、民法177条の適用があると解する

問15

法律による行政の原理の下においては、国が補助金の交付を行う場合には、法律によって補助金交付の根拠を定めなければならず、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律がこれを定めている

15の正解はここ
誤り
国の補助金は、個別の法律において根拠規範が置かれているものもあるが、根拠規範なしに予算措置によるもの多い。

問16

厚生労働大臣は、隔離を要する疾病が発生した場合には、厚生労働省設置法第4条第4号、第19号に基づき、隔離を要する疾病に罹患した患者について、強制隔離の措置をとることができる

16の正解はここ
誤り
厚生労働省設置法の組織規範からは直ちに厚生労働大臣の強制隔離権限が導かれるのではなく、同法規定の事務を、他の行政機関でなく厚生労働省にゆだねることを示したに過ぎない。

問17

民法第177条は本来、私人間の法律関係を規律するものであるから、公権力の行使や公の行政活動についてはこれが直接適用されることはない

17の正解はここ
誤り
昭35.3.31
租税滞納処分により国が土地を差し押さえた事案につき民法177条の適用を肯定しました

問18

行政機関が定立する定めであっても、国民の権利義務に直接関係しない行政規則は、行政機関が法律の根拠なくして定立することができる。

18の正解はここ
正しい
行政規則は行政の内部的定めにすぎないので、法律による行政の原理は及ばず、行政規則であれば基本的に行政機関は法律の根拠なしに自由に定めることができる。

問19

国は、国の補助金を交付するための根拠として、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律を定めているのであり、地方公共団体は、同法に相当する条例を制定しない限り補助金を交付することができない

19の正解はここ
誤り
補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律は規制規範であり、国の補助金を交付する為の根拠ではありません。
また、侵害留保説より、補助金等の給付行政には法律の根拠は不要です。

問20

法律に定められた租税を行政機関が減免する措置をとるためには、法律の根拠が必要である

20の正解はここ
正しい
租税の賦課は侵害行為の為、法律の根拠が必要となります。租税法律主義を徹底するという見地からも、法律で定められた租税を賦課徴収するかどうかについて、行政機関に裁量はないと考えられています。

問21

行政庁が申請に対しどのような処分をするかについて法令の規定に従って判断するための基準を定めるには、法律の委任が必要であり、行政手続法に委任規定が置かれている

21の正解はここ
誤り
申請に対しどのような処分をするかについて法令の規定に従って判断する基準は審査基準です。これは行政規則ですので法律による行政の原理は及ばず、法律の根拠に基づく必要もなく、法律の委任は不要となります。

問22

下級行政機関は上級行政機関の発する通達に拘束されるから、行政機関が通達に反する処分をした場合、当該処分は権限を逸脱して行われたものとして無効となる

22の正解はここ
誤り
通達は、法規の性質をもつものではないから、通達の趣旨に反する処分をしても、そのことを理由としてその処分の効力が左右されるものではない。としています。

問23

市長がB市を代表するとともに相手方Cを代理して契約を締結した場合、判例によると、当該契約の締結は双方代理に関する民法(108条)が類推適用されるが、B市議会が双方代理の事情を認識した上で市長による双方代理行為について追認した場合、議会の意思に沿ってB市にその法律効果が帰属する。

23の正解はここ

平成16.7.13
民法108条が類推適用されるが、市議会が市長の双方代理行為を追認した場合は民法116条が類推適用され、当該契約の法律効果は市に帰属します。

問24

産業廃棄物処理業者が、産業廃棄物処理施設の設置許可を県知事から受けた事例において、施設周辺に居住する者が施設の操業により健康被害の恐れが生ずることを主張し、施設操業を差止め用とする場合は、施設設置許可の取消訴訟を提起することなく、人格権に基づき産業廃棄物処理業者を被告として民事訴訟を適法に提起できる

24の正解はここ

昭和56.12.16
公権力の行使の取消・変更に関わる請求を含有する事を理由に、人格権に基づく民事差止めは不適法となるが、産業廃棄物処理業者を被告として操業の差止めを求める民事訴訟は適法に提起できる。

問25

公共用財産の水路が、長年事実上公の目的に供用されることなく放置され、公共用財産としての形態、態様を全く喪失した事例において、Aが当該水路の土地を20年以上水田として利用し、平穏かつ公然と占有を続けてきた場合は、判例によればAが取得できるのは公用制限を伴う本件土地所有権である。

25の正解はここ
×
昭和51.12.24
黙示的な公用廃止がなされているため、「公用制限のない取得時効の成立」を認められています

問26

建物を築造する場合に境界線から50cm以上の距離を保つべきことを定める民法第234条第1項の規定は、建築基準法第63条の定める防火地域又は準防火地域内にある耐火構造の外壁を有する建築物についても、直ちに適用が排除されるものではなく、民法規定により保護される隣地の採光・痛風、相隣者間の生活利益を犠牲にしてもなお制限を超える建築を許すだけの合理的な理由がある場合に限って建築基準法の規定が優先適用される

26の正解はここ
×
平元9.19
建築基準法63条は「常に」民法234条1項に優先する特則説を採っています。そのため、後半部が誤りとなります。

問27

生活保護法について、被保護者が受ける保護受給権は当該個人に与えられた一身専属の権利であり、原則は相続対象にならないが、被保護者の生存中の金銭給付を内容とする扶助で、すでに遅滞のものは相続対象になる

27の正解はここ
×
昭和42.5.24
被保護者、要保護者が国から生活保護を受けるのは法的権利であり保護受給権と解すべきである。この権利は一身専属上の権利であり、他に譲渡し得ないし相続対象ともなり得ない。生存中の扶助ですでに遅滞にある給付についても、医療扶助はもちろん金銭給付についても、当該保護者の死亡により当然消滅し、相続対象とはなり得ない。となります