耳で覚える!行政書士 記述式対策
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問1

A県内の一定区域において、土地区画整理事業が計画された。それを施行する為、土地区画整理法に基づくA県知事の認可を受けて、土地区画整理組合が設立され、合わせて、本件事業にかかる事業計画も確定された。これを受けて本件事業が施行され、工事完了などを経て、最終的に、本件組合は、換地処分を行った。
Xは、本件事業の区域内の宅地につき所有権を有し、本件組合の組合員である所、本件換地処分は換地の配分につき違法なものであるとして、その取り消しの訴えを提起しようと考えたが、同訴訟の出訴期間がすでに経過していることが判明した。
この時点において、本件換地処分の効力を争い、換地のやり直しを求めるため、Xは誰を被告として、どのような行為を対象とする、どのような訴訟を提起すべきか。

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1の正解はここ
本件組合を被告とし、本件換地処分を対象とする無効の確認を求める訴えを提起すべきである。
取消訴訟を提起しようとしているが出訴期間がすでに経過していますので処分の取消の訴えを提訴できないです。これ以外の抗告訴訟であり、換地処分自体の効力を争うには無効確認の訴えになります。無効の確認の訴えは、処分の効力の有無の確認を求める訴訟であり訴訟期間の制限がありません。
そして、無効の確認の訴えは取消訴訟の規定が準用される為、処分をした行政庁が国または公共団体である場合はその所属する国または公共団体が被告となります。しかし、処分をした行政庁が国または公共団体に所属しない場合は当該行政庁を被告とします。
都道府県の認可を受けた土地区画整理組合は、土地区画整理事業の施行者として換地処分ができる法人になるため民間事業という事になりますので、国または公共団体に所属しないものとなり、被告は本件組合となります。

問2

AはBとの間で、A所有の甲土地をBに売却する旨の契約を締結したが、Aが本件契約を締結するに至ったのは、平素からAに恨みを持っているCが、Aに対し甲土地の地中には戦時中に軍隊によって爆弾が埋められており、いつ爆発するかわからないといった嘘の事実を述べたことによる。Aはその爆弾が埋められている事実をBに伝えたうえで、甲土地を時価の1/2程度でBに売却した。売買から1年後に、Cに騙されたことを知ったAは、本件契約に係る意思表示を取り消すことが出来るか。「本件契約に係るAの意思表示」を「契約」と表記して40字程度で記述せよ

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2の正解はここ
Bが詐欺の事実を知り、又は知ることが出来た場合に限り、Aは契約を取り消すことが出来る。
第三者が詐欺を行った場合において(C)、相手方(B)がその事実を知っていたか、もしくは知ることが出来た場合に限り、Aは意思表示を取り消すことが出来ます。相手方(B)が善意無過失である場合はできません。
また、取消権の期間について、追認をすることが出来る時から5年または行為の時から20年経過で時効により消滅しますので、今回は問題ありません。

問3

【設例】
 A所有の甲不動産をBが買い受けたが登記未了であったところ、その事実を知ったCが日頃Bに対して抱いていた怨恨の情を晴らすため、AをそそのかしてもっぱらBを害する目的で甲不動産を二重にCに売却させ、Cは登記を了した後、これをDに転売して移転登記を完了した。BはDに対して甲不動産の取得を主張できるか。

【判例の解説】
 上記設例におけるCはいわゆる背信的悪意者に該当するが、判例はかかる背信的悪意者からの転得者Dについて、無権利者からの譲受人ではなくD自身が背信的悪意者と評価されるのでない限り、甲不動産の取得をもってBに対抗しうるとされている。

上記の設例について、上記の判例の解説の説明はどのような理由に基づくものか。「背信的悪意者は」に続けて背信的悪意者の意義をふまえつつ、Dへの譲渡人Cが無権利者でない理由を記述せよ

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3の正解はここ
(背信的悪意者は)登記の欠缺を主張する正当な利益を有しない者であって、AC間の売買自体は有効であるから。
1:判例より、背信的悪意者とは、登記の欠缺を主張する正当な利益を有しない者の事です。
2:Cが背信的悪意者であることは、「所有権の取得をBに対抗できない」という事だけであり、AとC売買自体を無効とするものではないです。そのため、Cは無権利者というわけではなく、Dは無権利者から購入したということにはなりません。

問4

A所有の雑居ビルは、消防法上の防火対象物であるが、非常口が設けられていないなど、消防法等の法令で定められた防火施設に不備があり、危険な状態にある。しかし、その地域を管轄する消防署の署長Yは、Aに対して改善するよう行政指導を繰り返すのみで、消防法5条1項所定の必要な措置をなすべき旨の命令をすることなく放置している。こうした場合、行政手続法によれば、Yに対してどのような者が、どのような行動をとることができるか。また、これに対してYはどのような対応をとるべきこととされているか。

消防法
第5条1項 消防長又は消防署長は、防火対象物の位置、構造、設備又は管理の状況について、火災の予防に危険であると認められる場合、消火、避難その他の消防の活動に支障になると認める場合、火災が発生したならば人命に危険であると認める場合その他火災の予防上必要があると認める場合には、権限を有する関係者に対し、当該防火対象物の改修、移転、除去、工事の停止又は中止その他の必要な措置をなすべきことを命ずることができる

4の正解はここ
何人も命令を求めることができ、Yは必要な調査を行い、必要と認めた時は命令をすべきである。

行政手続法36条1項:何人も、法令に違反する事実がある場合においてその是正のためにされるべき処分又は行政指導がされていないと思料するときは、当該処分をする権限を有する行政庁または当該行政指導をする権限を有する行政機関に対し、その旨を申し出て当該処分または行政指導をすることを求めることができる。
36条の3第3項:当該行政庁又は行政機関は、第一項の規定による申し出があった時は、必要な調査を行い、その結果に基づき必要があると認められるときは当該処分又は行政指導をしなければならない。

これらにより、1:どのような者が 2:どうような行動をとることが出来るか 3:Yはどのような対応をとるべきか は、
1:「何人も」 2:「命令を求めることが出来る」3:「必要な調査を行い、必要があると認められれば命令をすべきである」となります。

問5

Aは、木造2階建ての別荘一棟(区分所有建物でない)をBら4名と共有しているが、同建物は建築後40年が経過したこともあり、雨漏りや建物の多くの部分の損傷が目立つようになってきた。そこで、Aは同建物を建て替えるか、またはいくつかの建物部分を修繕・改良(以下修繕等とよび、解答においても修繕等と記すること)する必要があると考えている。
これらを実施する為には、建て替えと修繕等のそれぞれの場合について、前記共有者5名の間でどのようなことが必要か。「建て替えには」に続いて民法の規定に照らし記述せよ。(上記の修繕については民法の定める「変更」や「保存行為」には該当しないものとし、敷地の権利は考慮しないものとする)

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5の正解はここ
(建て替えには)共有者全員の合意が必要で、修繕等には各共有者の持分の価格の過半数の決定が必要となる。

物を共有している者は、共有物の全部について持ち分に応じた使用が出来ます。
今回は建替えと修繕等の場合とありますので、建替えは「変更行為」に当たり、修繕等は「管理行為」に当たります。(修繕のみは保存行為ですが、問題で変更・保存に当らないとしているため管理行為となる)
変更行為については共有者全員の同意が必要となり、管理行為には各共有者の持分の価格の過半数の決定が必要となります。

問6

Aは自己所有の時計を代金50万円でBに売る契約を結んだ。その際、Aは、Cから借りていた50万円をまだ返済していなかったため、Bとの間で、Cへの返済方法としてBがCに50万円を支払う旨を合意し、時計の代金50万円はBがCに直接支払うこととした。このような契約を何といい、また、この契約に基づきCの上記50万円の代金支払請求権が発生する為には、誰が誰に対してどのようなことをする必要があるか。

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6の正解はここ
第三者のためにする契約といい、CがBに対し、契約の利益を享受する意思表示をする必要がある。

要約者Aと諾約者B間の契約により、当事者の一方が第三者Cに対し給付をすることを約したとき、その第三者は債務者に対して直接その給付を請求する権利を有します。これを第三者のためにする契約といいます。また、第三者の権利は「第三者Cが債務者Bに対して契約の利益を享受する意思表示(受益の意思表示)をした時」に発生します。

問7

XはA県B市内において、農地を所有し、その土地において農業を営んできた。しかし、高齢のため農作業が困難となり、後継者もいないため、農地を太陽光発電施設として利用する事を決めた。そのために必要な農地法4条1項所定のA県知事による農地転用許可を得る為、その経由機関とされているB市農業委員会の担当者と相談したところ、「B市内においては太陽光発電の為の農地転用は認められない」として、申請用紙の交付を拒否された。そこでXはインターネットから入手した申請用紙に必要事項を記入してA県知事あての農地転用許可の申請書を作成し、必要な添付書類とともにB市農業委員会に郵送した。ところがこれらの書類は「この申請書は受理できません」とするB市農業委員会の担当者名の通知を添えて返送されてきた。この場合農地転用許可を得る為Xは、いかなる被告に対しどのような訴訟を提起すべきか。

農地法
(農地転用の制限)
第4条 農地を農地以外のものにする者は、都道府県知事の許可を得なければならない
2 前項の許可を受けようとする者は、農林水産省令で定めるところにより、農林水産省令で定める事項を記載した申請書を農業委員会を経由して、都道府県知事等に提出しなければならない。
3 農業委員会は、前項の規定により申請書の提出があったときは、農林水産省令で定める期間内に、当該申請者に意見を付して、都道府県知事等に送付しなければならない

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7の正解はここ
A県を被告とし、農地転用許可の義務付けの訴えと不作為の違法確認の訴えを併合提起する。

B市農業委員会は、申請書の提出があった場合、その申請書をA県知事に提出しなければならず、申請書の提出があった場合行政庁は遅滞なく審査を開始しなければならないとあります。しかし、県知事への提出がされておらず県知事による処分が何らされていません。その為、「処分をすべきであるにもかかわらずそれがされない時に、行政庁がその処分をすべき旨を命ずることを求める訴訟」である義務付け訴訟が考えられます。
そして、義務付け訴訟は「申請型」「非申請型」がありますが、今回は非申請型となるので「不作為型」か「拒否処分型」かを判断します。上記の通り、A県知事による処分が何らされていないことから、不作為型であると考えることができますので、不作為型の義務付け訴訟は「不作為の違法の確認の訴え」を併合提起します。(判例で、農業委員会の受理許否行為は都道府県知事の行為とは言えないとされていますので、やはり都道府県知事による処分は何らされていないという事になります)

そして被告は、当該処分権限を有する行政庁の所属している国または公共団体ですので、A県知事の所属するA県が被告となります。
農地転用許可をする権限を有するのは「農業委員会」ではなく「A県知事」だから、県知事が所属するA県を被告とします。

問8

画家Aは、BからAの絵画(本件絵画といい、評価額は500万円~600万円である)を購入したい旨の申し込みがあったため、500万円で売却することにした。ところが、A・B間で同売買契約を締結した時に、Bは成年被後見人であったことが判明したため(成年後見人はCで、その状況は現在も変わらない)、Aは本件契約が維持されるか否かについて懸念していたところ、Dから本件絵画を気に入っているため600万円ですぐにでも購入したい旨の申し込みがあった。Aは本件契約が維持されない場合には本件絵画をDに売却したいと思っている。Aが本件絵画をDに売却する前提として、Aは誰に対し、一か月以上の期間を定めてどのような催告をし、その期間内にどのような結果を得る必要があるか。なお、AおよびDは、制限行為能力者ではない。
「Aは」に続けて記述せよ。記述にあたり「本件契約」を入れることとし、「1か月以上の期間を定めて」および「その期間内に」の記述は省略する事

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8の正解はここ
(Aは)Cに対し、本件契約を追認するか否かを確答すべき催告をし、追認しない旨の確答を得る。

制限行為能力者の相手方は不安定な地位になるため、相手方を保護する為の催告権が認められます。催告の相手ですが、制限行為能力者のままである場合はその法定代理人へ催告し、制限行為能力者が行為能力者となった場合はその本人に催告権を行使しますので、今回はCに催告します。
次に催告に関し、1か月以上の期間を定めてその期間内に契約を取り消すことが出来る追認するかどうかの確答をすべき旨の催告をすることとなります。今回は省略する記述があるので、「本件契約を追認するか否かを確答すべき催告をする」となります

最後に、今回はAは、Dと取引したい、つまりBとの契約をなしにしたいので、その催告でCから追認を拒絶する確答を得なければならないです。無返答の場合はその行為を追認したものとみなされてしまいますので、無返答ではだめとなります。

問9

甲自動車を所有するAは、別の自動車を取得したため、友人であるBに対して甲を贈与する旨を口頭で約し、Bも喜んでこれに合意した。しかしながらAは、しばらくして後悔するようになり、Bとの間で締結した甲に関する贈与契約をなかったことにしたいと考えるに至った。甲の引渡しを求めるBに対し、Aは民法の規定に従い、どのような理由でどのような法的主義をすべきか。なお、この贈与契約において無効及び取消の原因は存在しないものとする

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9の正解はここ
書面によらない贈与契約のため、履行修了していないことを理由として契約を解除すべきである。

贈与契約は、書面によらない贈与の場合は履行が終了していない場合には、契約を解除することが出来ます。
書面によらない契約であり、履行修了していないということを示すことになります。

問10

A市は、市内へのパチンコ店の出店を規制する為、同市内のほぼ全域を出店禁止区域とする条例を制定した。しかし、事業者Yはこの条例は国の法令に抵触するなどと主張して、禁止区域内でのパチンコ店の建設に着手した。これに対してA市は、同条例に基づき市長名で建設の中止命令を発したが、これをYが無視して建設を続行している為、A市はYを被告とし、建設の中止を求める訴訟を提起した。最高裁判所の判例によれば、こうした訴訟は、どのような立場でA市が提起したものであるとされ、また、どのような理由でどのような判決がなされるべきことになるか。

10の正解はここ
もっぱら行政権の主体の立場からなされ、法律上の争訟にあたらず、訴え却下の判決がなされる。

この訴えは、条例に基づき市長名でYに建設中止命令をしていることからも、もっぱら行政権の主体として、行政上の義務の履行を求めています。裁判所は、行政事件を含む民事事件において審判をできる対象は「法律上の争訟」です。その為、この訴えは当然に裁判所の審判の対象となるものではないので、法律上の争訟という要件を欠き、却下判決が出されることになります。

問11

AはBに対して100万円の売買代金債権を有していたが、同債権については、A・B間で譲渡禁止特約が付されていた。しかし、Aは特約に違反して上記100万円の売買代金債権をその弁済期経過後にCに対して譲渡し、その後Aが、Bに対しCに譲渡した旨の通知をした。Bはその通知があった後直ちに、Aに対し上記特約違反について抗議しようとしていた所、Cが上記100万円の売買代金の請求をしてきた。この場合、BはCの請求に応じなければならないかについて記述せよ

11の正解はここ
Cが善意無重過失である場合、譲渡禁止特約があっても、Bはその請求に応じなければならない。

債権は原則譲り渡すことができ、当事者が譲渡制限の意思表示をしたときでもその効力を妨げられません。ただし、譲受人が譲渡制限特約がある事を知り、または重大な過失により知らなかった場合は、債務者はその履行を拒むことが出来ます。

問12

(人の生命または身体を害するものでない)不法行為による損害賠償請求権は、被害者又は法定代理人が、いつの時点から何年間行使しないときに消滅するか2つの場合を記述せよ

12の正解はここ
損害および加害者を知った時から3年間、または、不法行為の時から20年間行使しないとき。

不法行為による損害賠償請求権の消滅時効について、人の生命・又は身体を害するものである場合は、「被害者または法定代理人が、その損害および加害者を知った時から5年、または不法行為の時から20年」行使しない場合に消滅します。
人の生命・身体を害するものでない場合、「被害者または法定代理人が、その損害および加害者を知った時から3年間、または不法行為の時から20年間」行使しないと消滅します。

問13

A市は、A市路上喫煙禁止条例を制定し、同市の指定した路上喫煙禁止区域内の路上で喫煙した者について、2万円以下の過料を科す旨を定めている。Xは路上喫煙禁止区域内の路上で喫煙し、同市が採用した路上喫煙指導員により発見された。この場合、Xに対する過料を科すための手続は、いかなる法律に定められており、また、同法によれば、この過料は、いかなる機関により科されるか。さらに行政法学上、このような過料による制裁を何と呼んでいるか。

13の正解はここ
地方自治法に定められ、普通地方公共団体の長により科され、この制裁を秩序罰と呼ぶ。

A市が制定したA市路上喫煙禁止条例は地方自治法により定められた条例です。条例違反した者に対し、2年以下の懲役もしくは禁錮、100万円以下の罰金、拘留、科料、没収の刑、5万円以下の過料を科する規定を設けることが出来ます。今回のような軽微な義務違反に対して科される過料による制裁を「行政上秩序罰」と呼びます。秩序罰は行政処分として科され、普通地方公共団体の長の担任事務となります。

問14

民法の規定によれば、離婚の財産上の法的効果として、離婚した夫婦の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することが出来る。判例は、離婚に伴う財産分与の目的ないし機能には3つの要素が含まれ得ると解している。この財産分与の3つの要素について記述せよ

14の正解はここ
婚姻中の共同財産の清算、離婚後の生活に困窮する配偶者の扶養、離婚に伴う慰謝料を含む。