刑法 一問一答 短答式対策(随時更新)
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問1
責任能力の有無・程度は、行為者の犯行当時の精神状態だけでなく、行為者の犯行前の生活状況、犯行の動機、態様等のほか、被害者やその遺族の処罰感情も含む諸事情を総合的に考慮して判断される
1の正解はここ
×
責任能力は法律判断で裁判所に委ねられており、行為者自身についての事情を判断要素とするため、被害者や遺族の処罰感情は判断要素とはなりません。
問2
相手を包丁で突き刺した時点では行為者に責任能力が存在するが、その相手が死亡した時点では責任能力が存在しない場合、行為者に死亡の結果について刑事責任を問う事は出来ない
2の正解はここ
×
責任能力の有無は、結果発生時ではなく行為時に、行為者が自己をコントロールできたかどうかの基準で判断します。
問3
13歳の少年であっても、故意の犯罪行為により被害者を死亡させた場合においては、事件の重大性等の諸般の事情を考慮し、刑罰が科されることがある
3の正解はここ
×
刑法41条
14歳に満たない者の行為は罰しない。
是非弁識能力が十分でない場合も考慮し、また可塑性(教育によっての変化)の高い少年に刑事罰は妥当ではないという判断によります。
問4
アルコールの影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させて人を負傷させた危険運転致傷事件の行為者については、この類型の危険運転致傷罪が運転者の飲酒酩酊を前提としているにもかかわらず、責任能力が否定されることがある
4の正解はここ
〇
昭43.2.27
飲酒の際には酒酔い運転の意思が認められず、飲酒の後、飲酒酩酊による心身耗弱状態で運転の意思を生じた場合は、第2項の適用を認める余地が残されています。
問5
犯行当時の行為が、心神喪失状態にあった場合は処罰されないが、心身耗弱状態にあった場合は必ずその刑が減軽又は免除される
5の正解はここ
×
刑法39条1項 心神喪失者の行為は罰しない。
同条2項 心身耗弱者の行為はその刑を減軽する。
2項の場合、刑の免除は認められていません
問6
犯行時に14歳未満でも、公訴提起時に14歳に達していれば刑事責任能力が認められる。
6の正解はここ
×
刑法41条 14歳に満たない者の行為は罰しない
昭和24.11.25 参照 犯罪時に14歳に満たないものは処罰されない
問7
犯行時に成年に達していても、犯行時の知能程度が12歳程度であった場合には、刑事未成年者に関する刑法第41条が準用される
7の正解はここ
×
昭和34.11.25
刑法第41条は、幼児は身体・発育が十分でなく生活経験に乏しく、従って精神の成熟も十分でないのが一般であるから、行為者につき個々に精神の成熟度を測定することなく画一的にその限界を定める方が便利且つ適切との考慮に出たものである。智能程度が低いことを専らの理由とするものではないから、被告人の知能程度が10歳程度であるとの一事を以ては刑事責任能力を否定する事は出来ない。
問8
犯行時に心身耗弱状態にあったと認められれば刑が任意的に減刑される
8の正解はここ
×
刑法39条2項 必要的減軽としています
問9
犯行時に事物の是非善悪を弁識する能力が著しく減退していても、行動を制御する能力が十分保たれていれば、完全責任能力が認められることがある
9の正解はここ
×
心身耗弱を、弁識能力又は制御能力が著しく減退している者としています。そのため、どちらかが著しく減退している場合は完全責任能力は認められません
問10
飲酒当初から飲酒後に自動車を運転する意思があり、実際に酩酊したまま運転した場合、運転時に飲酒の影響により心身耗弱状態であっても、完全責任能力が認められることがある
10の正解はここ
〇
昭和43.2.27
「飲酒の際」に酒酔い運転の意思が認められる場合には、刑法第39条2項を適用して刑の減軽をすべきでない。となっています。
問11
法律を知らなかったとしても、そのことによって罪を犯す意思がなかったとすることはできないが、情状によりその刑を減軽し、又は免除することができる
11の正解はここ
×
刑法第38条3項
減軽することはできるが、免除はできません。
問12
親告罪について、告訴権者に対して自己の犯罪事実を告げ、その措置に委ねたときは刑を減軽することができる
12の正解はここ
〇
刑法第42条2項
親告罪(被害者による告訴がないと公訴できない罪。事実が公になると被害者のプライバシーが侵害されるなどの犯罪や親族間など。)
問13
同じ精神障害の状態にありながら、ある行為については完全な責任能力が認められ、他の行為については完全な責任能力が認められないことがある。
13の正解はここ
〇
昭和59.7.3
責任能力の判断は、精神障害という生物学的要素と、弁識能力・制御能力という心理学的要素の両方を基準とする混合的方法によるものを前提とし、行為ごとに責任能力を判断する事が可能。
問14
甲は、乙が所有する木造家屋に乙が現在しているものと思って放火し全焼させたが、実際にはだれも現在していない空き家だった。この場合、甲には現住建造物等放火罪が成立するが、その刑は非現住建造物等放火罪の刑による。
14の正解はここ
×
この場合、客観的には非現住建造物放火罪の実行行為が存在したに過ぎないので、非現住建造物等放火罪が成立します
問15
甲は、男性乙が、酩酊して暴れまわる女性丙を取り押さえているのを目撃し、乙が丙に対し無理やりわいせつ行為に及ぼうとしているものと誤信し、丙を助けるため乙の腹部をゴルフクラブで数回強く殴打するなど暴行を加え重傷を負わせた。甲の暴行の程度が、甲が認識した急迫不正の侵害に対する防衛行為としての相当性を超えていた場合、甲には傷害罪は成立しない
15の正解はここ
×
急迫不正の侵害があると誤信し、相当性を超えた防衛行為をしているので、誤想過剰防衛し、少なくとも過剰性の基礎となる事実の認識があった場合は故意犯が認められ、傷害罪成立が認められ得ます。
問16
甲は、乙に対する殺意をもって乙の背後から拳銃を発射したところ、乙は赤ん坊の丙を抱いており、銃弾が乙の身体を貫通した後丙にも命中し、両名を死亡させた。甲が乙に抱かれている丙の存在を認識していなかった場合でも甲には乙及び丙に対する殺人罪が成立する。
16の正解はここ
〇
同一構成要件間における事実の錯誤については、犯人が認識した罪となるべき事実と現実に発生した事実がとが必ずしも具体的に一致する事は要せず、両者が法定の範囲内において一致することをもって足りると解すべきであるから、人を殺す意思の下殺害行為に出た以上、結果について故意があるものというべき。とあります。
問17
甲は、公務員乙がその法令上の職務Aを執行するにあたり、乙が執行している職務がそれとは別の法令上の乙の職務Bであると誤信して乙の顔面を手拳で殴る暴行を加えた。乙の執行する職務がBでなくAであると分かっていれば暴行に及ばなかったという事情があった場合でも、甲には公務執行妨害罪が成立する
17の正解はここ
〇
昭和7.3.24
公務執行妨害罪の職務行為の適法性についての錯誤を違法性の錯誤と解しているため、職務AをBと誤認したとしても暴行の故意は阻却されません。
問18
客観的にはわいせつ文書を、その意味内容は理解したものの、刑法上のわいせつ文書には該当しないと判断し、同文書を販売した場合、わいせつ文書販売罪は成立しない
18の正解はここ
×
チャタレイ事件 参照
わいせつ文書販売罪の故意は、問題となる記載の存在の認識と、これを頒布販売する認識があれば足り、記載のある文書が同条所定のわいせつ性を具備するかの認識まで必要としているものではない。となります。よって、客観的にわいせつ性を有するものであれば故意を阻却しません。
問19
Aを脅迫する意図でA宅に「お前の家に火をつけてやる」と記載した手紙を郵送したところ、誤ってA宅の隣のB宅に配達され、Bが手紙を読んで畏怖した。この場合Bに対する脅迫罪が成立する
19の正解はここ
〇
大11.2.4
客体の錯誤において、被害者が誰であるかは犯罪の成否に関係ない。となります。
問20
乙に対し、Aの弱みに付け込んでAから現金を喝取するよう唆したところ、乙はその旨決意し、深夜公園にいるBをAと誤認して現金を喝取しようとBを脅迫したが、人違いの為喝取できず、その直後Aを公園に呼び出しAから現金を喝取した。この場合、Aに対する恐喝既遂罪の教唆犯とBに対する恐喝未遂罪の教唆犯が成立する
20の正解はここ
〇
昭53.7.28
犯罪の故意があるとするには罪となるべき事実の認識を必要とするが、犯人が認識した罪となるべき事実と現実に発生した事実とが必ずしも一致する事を要するものではなく、両者が法定の範囲内において一致することをもって足りると解すべきである。となります。
また、犯人の認識しなかった人に対して結果が発生した場合も故意があるものというべきであり、複数人への故意を認めています。
問21
12歳のAを15歳と誤信し、Aに対し暴行・脅迫を加えずわいせつな行為をした場合、強制わいせつ罪が成立する
21の正解はここ
×
故意があるというには罪となるべき犯罪事実の認識が必要です。
13歳未満という事実の認識を欠く場合故意が認められず同罪は成立しません。
問22
甲は、Aが甲に射殺されることに同意したため、Aに対し殺意をもって拳銃を発射したが、銃弾はAに当らずAの頭部をかすめ、Aの背後にいて、甲がその存在を認識しておらず、射殺される同意をしていなかったBに命中して同人を死亡させた。甲にはAに対する同意殺人未遂罪とBに対する殺人既遂罪が成立する
22の正解はここ
×
昭25.10.10
方法の錯誤(意図した客体と別の客体にも侵害が生じること)において、意図した客体と、意図しなかった客体との2つに故意を認めています。構成要件の実質的重なり合い場合にも符号を認め、軽い罪の限度で故意既遂犯を認めています。
Aとの関係では同意殺人の故意が認められ、同意殺人未遂罪が成立し、Bとの関係では同意殺人罪の限度で故意が認められるので、同意殺人罪が成立します。(客観的には殺人である)
問23
乙が第三者から盗んだものを、盗品かもしれないと認識していたが、値段が安いので構わず有償で譲り受けた。この場合、盗品等有償譲受け罪は成立しない
23の正解はここ
×
盗品等関与罪の成立には、行為時点で盗品等であることを知っていることが必要ですが、盗品性の認識は未必的なもので足りる。としています。
問24
甲は殺意をもって乙の首を絞め、乙が気絶したのをみて既に窒息死したものと誤信し、乙を海に投げ込んだところ、乙は海中で溺死した。この場合甲には殺人罪が成立する
24の正解はここ
「ウェーバーの概括的故意」
第1行為と結果との間に因果関係が存在し、第2行為の介在はそれを遮断するものではないとして、生じた構成要件該当事実についての故意を認めています。
問25
暴力団組長甲は、配下組員乙に対し「Aがこちらの要求を聞き入れなかったら殺してこい。聞き入れるのであれば殺す必要はない」旨指示し、乙に拳銃を手渡した上、乙を対立する暴力団組員Aのところに行かせた。乙はAが要求を聞き入れなかったので、Aを拳銃で射殺した。甲には殺人罪の故意が認められる
25の正解はここ
〇
昭56.12.21
被害者の殺害を一定の事態の発生にかからせていたとしても、被害者の殺害の結果を認容していたとであるから故意の成立にかけるところはない。となります
問26
駐車場で他人の所有する自動車に放火し、公共の危険を生じさせた。その際公共の危険が発生するとは認識していなかった場合、建造物等以外放火罪の故意は認められない
26の正解はここ
×
刑法110条「建造物等以外放火」は結果的加重犯の規定のため、重い結果の認識は故意の成立には不要との学説により、この放火罪の成立には、焼損の結果公共の危険を発生させることまでを認識する必要はない。となります
問27
甲は、乙を殺害する目的で乙を含む複数の者の飲用に供されているペットボトル内のお茶に致死量の劇薬を投入した。その結果そのお茶を飲用した複数の者全員が死亡した。甲にはお茶を飲用して死亡した者の数に応じた殺人罪の故意が認められる
27の正解はここ
〇
昭53.7.28
犯罪の故意は、犯人が認識した事実と発生した事実が法定範囲内で一致すれば足り、殺意をもって行為に出た以上、犯人の認識しなかった人に結果が発生した場合にも故意がある。となっています。
問28
覚醒剤を含有する粉末を所持していた甲は、同粉末が身体に有害で違法な薬物であることは認識していたが、覚醒剤や麻薬ではないと認識していた。この場合甲には、覚醒剤取締法違反、(覚醒剤所持)の故意が認められる
28の正解はここ
×
平2.2.9
覚醒剤や麻薬ではないと認識していた以上、覚醒剤取締法違反の故意は認められない。となります
問29
乙宅前路上に置かれていた自転車を乙の所有物と認識して持ち去ったが、実際には同自転車は無主物だった。この場合遺失物横領罪が成立する
29の正解はここ
×
遺失物横領罪の「占有を離れた他人の物」とは
①誰の占有にも属していない物
➁委託関係に基づかないで行為者の占有に帰属した物 となります。
他人が所有権を放棄したものや無主物は客体となりません。
問30
第三者が起こした交通事故により瀕死の重傷を負い路上に倒れていた乙を、既に死亡していると思って山中に遺棄した。この場合死体遺棄罪は成立しない
30の正解はここ
〇
死体遺棄罪の遺棄とは、社会通念上の葬祭によらず放棄する行為を含みます。また、親族など、葬祭を行うべき関係にあるものが放棄した場合にあたります。
今回、客観的には生きている人間を放棄していますが、死んでいると認識している為、単純遺棄・保護責任者遺棄の故意はなく、第三者であるため葬祭義務のある関係でもないので死体遺棄罪は成立しない。となります。
問31
Aを川の中に突き落として溺死させようと思い、橋の側端に立っていたAを突き飛ばしたところ、Aは落下する途中で橋脚に頭部を強打し即死した。この場合殺人既遂罪が成立する
31の正解はここ
〇
因果関係の錯誤が存在しますが、殺人既遂罪が成立する。となります